5.〈たのしく、はたらく〉

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「ならどっかお店に……ああ、それじゃ、家まで帰るの大変か。じゃあ、仕方ない、買い物付き合うよ、中木くん、また明日ね」 いって修二さんの脇に立った、肩を貸すためだ。意味はすぐにわかったんだろう、修二さんは素直に私の肩に手を乗せ体重を預けてくれる。 「おい、付き人だからって近づきすぎだろう!」 中木くんが声を上げる。 「しかたないのよ、足を怪我していてうまく動けないんだもん」 「怪我ぁ?」 中木くんは修二さんを上から下までみつめた、いや確かに、足は湿布だけで普通の靴を履いてるから、全然いつも通りなんだけど。 「治りかけで無茶できないから、ね?」 修二さんを見上げていうとかすかにうなずき、手に力を込めて完全に私の肩を抱く、そのほうが歩きやすいんだろう。 「腹減った」 修二さんに催促される、そうだ、確かにタクシーも待たせてる、この間にもメーターは動いてるんだ! 「中木くん、お疲れさま!」 いって私と修二さんは店に向かって歩き出す。 「酒井さん!」 なおも呼び止められた、修二さんが足を止めてくれないので、私は歩きながら顔だけ振り返った。 「また、明日ね」 私は笑顔で手を振り返事に変える、その耳に修二さんがふんと鼻を鳴らすのが聞こえた。わずかに笑みが見えたような気がするけど、気のせいだったようだ。 観音開きのドアを開けて入ると、店長がびっくりした顔で迎えてくれた。 「酒井さん、お熱いね」 笑われてしまう。 「違うんです、これには事情が」 いいながら修二さんの歩みに合わせて歩いていく、店長にもすぐにその事情はわかったようだ、修二さんが足をかばって歩いているのが見えたんだろう。
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