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嫌そうな振りをしながらも体勢を直し、背を伸ばしてそっと修二さんの唇に唇を押し当てた。昨夜も何度もしたキス──そう自覚すると心臓がドクドクと動き出してしまう、ああ、修二さんにもバレてるんじゃ──恥ずかしさに離れようとしたのに、背中を、後頭部を掴まれ固定されてしまう。
「修……っ」
声は修二さんの口に吸い込まれてしまう、抵抗するのに逃れられない、体を起こすこともできないなんて。
目を閉じてそのキスを受ける、そんな時間、ないのに……でも離れるのも惜しくてキスを味わっていると、修二さんの手がスカートを手繰り始めて、
「もう! ばか!」
体を離して軽く頭を叩くと、修二さんは笑顔で舌を出す。
「おはよう」
「なにがおはようよ! 早くシャワー浴びて!」
スカートを直しながらベッドを降りる、背後で修二さんの笑い声と衣擦れを聞きながら部屋を出た。
☆
今日のドラマは都内のレストランを借り切ってのテラス席での撮影となる。その現場に入ると、
「あら」
ヒロインの大松未来さんが私を見て声を上げた。
「あなた、本社勤務になったんじゃなかったの?」
いずれはそうなると、といっていたのを覚えていたんだろう、そして事件でしばらく現場に来れなかったからそう思ったのかも。さらには事件の件は聞いていないんだろう、いえないか、石黒ななみさんのファンに襲われたなんて。
「はい、あの、諸事情でまだ修二さんの──」
「直接雇用です」
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