11.〈とわに、そばに〉

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「通訳なんかしないぞ」 「してくれなくていいよ、べったりくっついて離れないだけ」 「それはそれでいいな」 いって修二さんが私の体を優しくなでる、そんな仕草に幸せを覚えた時、監督の撮影開始の声が響いた。 修二さんも仕事人だ、すぐに腕を解放して、さらに腰を掴んで立ち上がらせてくれた。私は修二さんのコートを受け取ってその場から離れる。 そんな人目をはばからない修二さんの行動は、まもなく芸能記者にもキャッチされる。 一緒に住んでいることも当然バレる、四六時中行動を共にする私たちに関する遠慮ない報道に、事務所のコメントは「本人に任せている」だ、これは暗に交際を認めたことになる。 とはいえ、テレビでよく見る芸能記者とやたら遭遇するのは、一体どんな情報を待っているのか。 「付き人、辞めようかな」 移動の車の中、局を出てからずっとタクシーがつかず離れずついてくるのを睨んでからつぶやいた。 「なんで」 修二さんが怒った声でいう。 「だって、監視されてるみたいで嫌だし、修二さんにも事務所にも迷惑かけてるし」 私の言葉に、運転している池口さんは即答でそんなことないといってくれる。 「修二さんは慣れてるかもしれないけどさ」 子供の頃からといっていいくらいから芸能界にいるんだ、視線を集めるのも慣れてるというか、当たり前というか、なりたかったんだろうし気にならないだろうけど、私は違う、むしろずっと裏方でやってきてから無理。 「別に慣れちゃいないし、辞めてどうする?」 「またバイトかな」
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