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1.〈たいへん、たいへん〉
3年勤めた広告代理店をクビになった。業績不振が原因で、社員の大部分が対象となった。だがそれは私がいる会社だけではない、業界全体の話のよう。
新年早々の辞令は、年末年始くらい重くならないようにとの配慮だったのだろうか。それでも正月休みが明けてすぐにクビを言い渡された心情は察してほしい。
私が入社した時はずっと右肩上がりだろうと思った業種だったのに、絶対はないのだと思い知らされたのは、離職時もだけど再就職の時も。
まったく仕事が決まらない。
せっかくのキャリアを生かしたくても、求人自体が少なく、あっても平気で30とか50とか面接に来るような事態!
まったくもって。よろしくないご時世になったものだ。
☆
職業安定所には毎日行ったが、この手の業種の求人はないみたい。ネットで探して応募を続けるも不採用が続く。90日の失業保険の給付など、あっという間に終わってしまった。
このままでは食べるのにも困る、とりあえずバイトを始める。
自宅のマンションと最寄り駅の間にあるコンビニエンスストアの求人を見つけ応募、あらまあ、これはすぐに決まった。ならばと思うが正社員では決まらないのはなぜだろう?
早朝と夕方から深夜前までの時間で働くことにした、昼間は仕事のエントリーや面接へ向かう。
ある日生活費のため少しお金を下ろそうと銀行へ行くと、残高が思ったより減っていて驚いた。そこそこ貯蓄はしてあるけれど、家賃や携帯などの固定費は変わらず落ちていくんだ。このままではゼロになってしまう──コンビニのバイトだけでは足りない、焦った私は昼間、週に3、4日程度でファミレスでも働き始めた。そうなると仕事を探す時間は減る、なんとも悪循環な日々が始まった。
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