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「それからアメフト部部員の人も、すっごく面白かったです!」
「ああ、しんちゃんのことかな? しんちゃん、褒められてるよ」
ゆかなが隣のテーブルにいる進藤の名前を呼んだ。「しんちゃん」と呼ばれている進藤遼太郎は、今作ではコメディリリーフの役を担当した。演劇は未経験だったが、持ち前の明るさと勉強熱心さを武器に今では見事な役者になっている。もともとアメフト部だったので、適役と言ってもいいだろう。
「まじ? ありがと!」
進藤は僕らのテーブルに見えるように大きな声でそう言うと、嬉しそうに手を振った。ゆかな以外は演劇未経験の同期ばかりだが、新入生からの評判は非常に良い。ただひとり、僕だけを除いては……。
僕の役には名前がない。
台本には「友人B」とだけ記されている。「A」ですらない。ちなみに「A」役のキャストは「友人さん」と新入生から呼ばれている。部員数も多いうちの部活では、初めのうちは名前ではなく役名で覚えてもらうことが基本だ。僕らのときもそうだった。だが僕だけが新入生たちの印象に残らず、キャストとして出たにも関わらず、裏方だと思われていることもあった。
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