ナナフシとカメレオン

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「本当ですか?」 「うん。演出や部長にも相談済みだよ」 「ありがとうございます。頑張ります」  僕は胸が熱くなるような感じがした。嬉しい反面、恥ずかしさと不安もある。 「これ脚本だから、来週までに読んで答えを聞かせてほしい」 「分かりました」  僕は笹山先輩からA4用紙の束にまとめられた台本を受け取った。タイトルは『無色で透明』。なんとなく胸がざわついた。  またしても僕の役には名前がなかった。  台本を何度も読み返す。確かに主役だ。セリフの量も多い。でもこれは僕だ。僕自身だ。何者にも慣れない若者を何者にもなれない奴が演じる。  この役が僕に適任なのはすごくよく分かる。だけどこれが、僕が望んでいた「変身」なのか。舞台のうえでも僕は僕じゃないか。
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