ナナフシとカメレオン

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 ああ。なんだこの感覚は。僕はどこにいる。  そう問いかけたとき、頭の中に最悪の答えが見つかった。この台本の主人公。これこそが僕だった。  僕は笹山先輩から受け取った『無色で透明』の台本を手にとると。親指と人差し指に力を込めて一気に引き裂いた。びりっ、びりびりっ、しゅっ、つっ、つぉ。紙を破く音は次第に小さくなり、文章は単語になり、そして文字になって、文字ですらなくなった。  もう僕はどこにもいない。  それから僕は部活に行かなくなった。 『拝島、大丈夫かー?』  無断で部活を休み続けていた僕のところに、進藤から連絡がきていた。進藤以外からも心配する連絡が入る。 『うん。ちょっと家庭でいろいろあって、部活やめるかも……』  適当に嘘をついて、そう返信した。どうせ僕がいなくなったって誰もなんとも思わない。進藤は悲しむかもしれないが、3日もすれば気にもしなくなるだろう。  笹山先輩にも同じように嘘をついて、主演を断ることにした。どうせやるならゆかな辺りに任せたほうがいい。彼女ならどんな役でも演じてくれるはずだ。  そんなことを思っていたら、授業おわりに廊下でゆかなに出くわした。 「あ、拝島くん。おつかれ」 「おつかれ。あのさ、笹山先輩の脚本のことなんだけど」
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