もう少しだけ、ときっと僕は明日も言う

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もう少しだけ、ときっと僕は明日も言う

 畳部屋は苦手だ。  その癖、築五十年のボロアパートから、僕はいまだに引っ越せずじまいでどろどろと生きている。  カーテンの隙間から差し込んでくる日の光に、堪らず目を細めた。  ちっぽけな和室の中、場違いに等しい桜色の花柄カーテンは、君がどうしてもこれがいいと言い張って選んだものだ。些細な我侭を、当時は少なからず鬱陶しく思っていたはずなのに、今では愛おしくさえ思えてくるから不思議だ。  花柄のカーテンも、この畳部屋も、僕も、全部要らなくなった。それなのに。  もう少しだけここに留まっていたい。留まらせてほしい。  この部屋に。あるいは、君がいなくなった袋小路に心のどこかで安堵を覚えている、前にも後ろにも進めない今の自分に。  だから、今日も僕は、朝から君の面影と酒に溺れたきり。  自分が醸しているアルコールの強烈な匂いに、ふ、と自虐の笑みが零れた。 〈了〉
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