お祝いと友人からの相談

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  「ただいま」  その後結局1時間ぐらい病室で話していた。  その間ずっと1号か2号を抱かせてもらい、俺はリアルに綾乃との子どもを想像した。    今までも何度も考えたことだった。  佑月を見るたびに思ったものだ。  いつか、こんな子どもが俺にもできるのかと。  「おかえり、早かったね」  「うん?そう?」  「もっとゆっくりしてくるのかと思ったわ」  綾乃がエプロンにポニーテールを揺らしながら出迎えてくれる。いつもの綾乃なのに、彼女が母になる日を想像して、すぐに百子さんが出てきて思わず笑ってしまった。  「なによ、急に」  「いや、なにも」  「酷い!絶対今失礼なこと考えたでしょ!」  俺から言わせてみれば十分綾乃が失礼である。    「考えてないよ」  「うそよ。じゃあ何を考えたのよ」  「綾乃がお母さんになったら百子さんだなあって」  嘘は言ってないし、貶しているわけじゃない。  けど、綾乃はすんごく変な顔したし「どうしたの」と言いたげだ。  「帰り、梓の子ども見に行ったんだよ」  「え!ずるい!」  「また行こうよ、まだ名前も決まってないし」  仕事終わりに凌と立ち寄っただけだ。  本当はもう少し落ち着いてでもよかったんだが、玲ちゃんが実家に帰ると言うからさ。  「うん、約束よ!」  「はいはい」  「それで、どうだった?」  「すんげー、かわいかった。もう梓そっくりでさ。でも笑うと玲ちゃんにも似てるんだ」  「へえ」  綾乃がとても興味津々に聞いてくる。  俺はちびあず1号を抱かせてもらったことや2号の方が凛々しい顔つきだったことなど色々と綾乃に話した。  「玲ちゃんがなんか急にお母さんって感じになってさ」  「それで急にそんなこと言い出したの?」  「うん。綾乃もそうなるのかなって思ったら何故か百子さんがでてきて」  俺の知る百子さんはハキハキしていてどっしりと構えている昔ながらの『母ちゃん』って感じの女性だ。道場の女将という立場にいることもあるけれど、彼女持ち前の明るさと世話焼き具合とおせっかいがいかにもな『母ちゃん』を発揮している。
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