お祝いと友人からの相談

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   「おかえりー!遅かったわね…ってどうしたの?」  凌を自宅に送り届けて自宅に戻った俺に綾乃が元気よく出迎えてくれたあと、キョトリと首を傾げた。  リビングのソファーに座ってテレビを見ていた綾乃があまりにも通常運転過ぎて俺までなんだか落ち込んでいたのが、妙に馬鹿らしくなる。  「……ううん。凌が飲み過ぎて自宅まで送ってきたからちょっと疲れただけ」     確かに凌は色々大変だと思う。でも俺は凌じゃないから、彼の気持ちを本当の意味で理解してあげられるわけじゃない。痛みも悲しみも全て想像した上での架空のものに過ぎない。  だからこそ、俺は凌に遠慮した。    「そうなの?珍しいわね、彼が酔っ払うまで飲むなんて」  「そういう時もあるんじゃない?」  「まあ、誰だってあるわよ。仕方ないわ、人間だもの」  「……なんか、今、すげーいいこと言った私みたいに思ってない?」  「え?思ったわよ。悪い?」  「……ううん。安定の綾乃で嬉しいよ俺は」  綾乃に甘えるように彼女の脚を枕にしてソファーに寝転がった。細い腰を抱きしめてお腹に顔を埋める。  彼女の優しく甘い匂いを思い切り吸い込んで幸せを噛み締める。どこか凌に対する後ろめたさはきっとこういうところなんだろう、と思う。  どうしてそんなことを感じてしまうのかわからない。けど、綾乃は絶対そんなことしないって信じられるから、不誠実な嫁をもらった凌がとても不憫だと思ってしまった。  「そんなに疲れたの?」  「うん疲れた。梓もいないし」  綾乃のちいさな笑いが頭上から落ちてきた。  それと同時に優しく温かな手の感触が髪を撫でてくれる。  「甘えん坊ねえ」  「いーじゃん、俺の綾乃だし」  「ふふふ。でも残念でした。これからは独り占めできないのよねえ」  綾乃が一瞬何を言っているのか理解できなかった。独り占めできないってどういうことだ、と埋めていた顔を離して上を向く。  すると、慈愛に満ちた視線が真っ直ぐに俺を見下ろしていた。  「天使が来てくれたみたいなの。まだ病院には行ってないけど。……一緒に行く?」  
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