お祝いと友人からの相談

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 とは言え。  「そうなると、ここだと現実問題ちょっと難しいよな」  大人2人暮らしなら今の部屋で十分だった。  それでも、子どもがいて、おまけにリモートできる環境を作るなら場所も整えないといけない。  「家買うか」  「家?」  「うん。結局は引っ越さないとだろうし」  この子がやがて大きくなった時、一人部屋が必要になるだろう。物も増えるし手狭になる。  それに。  「天使にも兄弟はいたほうがいいよね」  「そうね」  「俺は二人でも三人でもいいよ」  「多くて三人ね。それ以上は無理」  年齢や体力のことを考えるとやはり制限はある。これは俺がどれだけ頑張ってもどうにもできない。  「梓も家買うって言ってたな」  「そうなの?」  「うん。どうせなら近い方がいいか。綾乃も玲ちゃんと気軽にお茶できたりする方がいいでしょ」  「何かあった時お互い頼れるのはいいわね」  「最悪、梓に全部ぶん投げればいいし」  俺が「うーん」と悩んでいる一方、綾乃はクスクスと笑っていた。  「ねえ、それより綾乃はプライベートで梓と接するのは問題ないの?」  「どう言う意味?」  「ん?だって一応社長じゃん?プライベートでも会うのは嫌かなって」  「今更ね。それに私、九条くん自体嫌いじゃないわよ」  綾乃の答えを聞いて、どこかホッとした。  俺はずっと梓と一緒だったし、全然何も気にしないけど、綾乃は違うよなと思ったから。    「女の子なら、椿くんか環くんのお嫁さんになったらいいわね、ぐらいには大丈夫」  「絶対やだ。ぜーーーったい、無理!」  思い切り胸の前で腕を交差させてバッテンを作った。綾乃は目をまん丸にして不思議そうにしていたけど。  「男の子ならいいお友達になれるわ」  「それはそうだと思う」  「大丈夫よ。女の子ならとっても大事にしてくれるわ」  「限度があるから。梓のアレは異常」  「あら。九条くんとその子ども達は違うわよ。それに玲ちゃんの血も入ってるし」  綾乃がおかしそうに笑っている。  まだ生まれてもいない天使の未来が勝手に決まりそうで、俺は内心いい気分じゃなかった。  「だとしても、嫁にはやらん」  「いずれ嫁にいくわよ。どこかの知らない男より断然いいじゃない」  「………嫌だ」  知っているからこそ嫌なこともある。  けど、これ以上ないほど安心する家でもある。  綾乃の言うこともわかる。  けど。  「梓だけは駄目」  「パパじゃなくて、息子っちよ」  「一緒だ」  「でも好きになったら仕方ないわよね〜」  結果。娘が産まれ、俺は極力九条家を避けるようになる。
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