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綾乃の体調のこともあり、俺たちは昼食を食べた後、早々に帰宅することにした。
こういう状況でなければ引き止められたものの、今年はすんなりと帰してくれた。
家に着いてもまだお茶の時間だ。
テレビをつければ正月の特番が流れており、俺と綾乃は二人揃ってソファーに腰を下ろした。
「疲れたんじゃない?」
「んー、そうね」
「昼寝する?」
「んー、そうね」
綾乃の返事を聞きながら彼女を抱え込んで静かに横になる。
「今お昼寝したら夜」
「一時間ぐらいなら大丈夫」
「一時間じゃ済まないわよ、きっと」
だろうね、なんて言いながらも綾乃は大人しく身を委ねてくれる。
そんな彼女の温もりに、優しい匂いにつられてうとうとと目を閉じれば。
「雅、お腹空いたわ」
気づけば日がとっぷりと暮れていた。
綾乃は小さな口を尖らせて抗議をする。
俺が抱きしめているせいで逃げられない、と文句を言っている。
でも俺は知ってる。
綾乃が俺の腕をくぐり抜けてトイレに行き、また同じように戻って来て腕のなかにすっぽりとおさまっていることを。
「またここに戻ってくればいいよ」
寝ぼけたふりして綾乃のおでこにキスをすると、綾乃が抜け出せないように少し強めに抱きしめて、また綾乃を困らせるのだった。
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