世界でいちばん

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 「おぃひぃ〜」  テーブルに並んだ料理に綾乃は目を輝かせて美味しそうに食べ始めた。俺の知る限りの彼女の好きな食べ物ばかり並んでいるはずだ。  この年になってようやく気づいたけど、綾乃を落とすのは結構簡単かもしれない。  「このドレッシング美味しい!」と言う綾乃に「また作ったげる」と言えば満面の笑みで「やったー!」と返ってきた。要は餌付けだ。    可愛いな、おい。  まあ、こうやって二人で食事をすることに違和感を感じさせない距離感を作ることが難しかったけれど。今思えばもうそれはお互いビビりまくった結果で、悲しいぐらい遠慮した過去の遺産だ。  とは言え。  「おなかいっぱーい」  にこにこと寛ぐ彼女を見ていられる幸せがこうして今ここにあるならよしとしよう。過去を嘆いていも時間は戻らない。それならもう振り返らずに今を楽しむだけだ。  「お粗末さまでした」  それはそうと、同じ部屋着を着ているのに、綾乃が着るとエロく見えるのは何故だろう。特に露出があるわけじゃないのに、なんかエロいんだよ。    んーーっと伸びをすれば豊かなバストが上に下にと揺れる。中身を知ってしまったせいか、どんなふうに揺れるのか頭の中ではっきりと想像してしまい、下半身が頼りなくなった。  「片付け手伝うよ」  「いいよ、主役なんだから」  座っとけばいいの、と言っても綾乃が「ええー」と納得しない。すっぴんのせいかいつもより少し幼く見える彼女が唇を尖らせる。せっかく痩せたのに俺のせいでリバウンドするやらなんやら言いはじめる。 「俺が洗うから濯いで」 「よしきた!まかされよ」  仕方なく綾乃にも手伝いを頼む。  とは言え、皿は少ないし洗い物自体すぐ終わるだろう。 「誰だよ、ほんと」 「ふふふ。結城綾乃でございます」 「知ってるよ。知ってるけどさ」  頬を染めて肩で息をしながら目元を潤ませた綾乃が苦しそうに目を閉じる。震える腰が達するたびに敏感になり、彼女のナカの熱がトロトロに溶けてぐずぐずになる。その熱をなんとか鎮めたいと苦悶する身体に何度も腰を打ち付ける快感を思い出して___。  「……いや、昨日の夜あんだけ可愛い顔して俺に縋ってたのに、今は“結城綾乃でございます”とか言っちゃうんだと思って」  ぎゅうぎゅうに締めつけられて搾り取ろうと絡まり合いぐずぐずに溶けていく熱に俺は何度飲み込まれそうになったか。  溶かされそうになる楔をわずかに残った理性で持ち直す度に無駄と言われるようにまた引きづり込まれてさ。  「うぉっほっ、ごっほっ、うぇふっ」  綾乃がわざとらしい咳をする。  昨夜の彼女は子猫が甘えるよりも艶やかな声で鳴いていた。いつもよりも存分に鼻にかかる掠れた声が耳を撫でる。  昨夜のことを思い出していればパッと目が合った綾乃の視線がそろりと逃げていく。  
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