世界でいちばん

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 綾乃は変わらずパワフルだった。いや、最近さらにアップデートしている。子どもを三人も産んだとは思えないほど若々しい。もう46歳なのに。  「いお、おいで」  綾乃が俺の両脇を眺めながらニマニマとしている。さて、娘たちがどんなふうに遊ばれるのかと見守りながら、俺は近寄ってきた伊織を呼んだ。  「ねんねしよう、パパと」    おいで、と手を伸ばせば伊織はきゃああ、と笑いながら手を伸ばしてきた。誰に似たのか人見知りせず、誰にでも抱かれてしまう。パパ嫌い時期がなくてよかった。頑張って綾乃とふたり育児をしたおかげだと思っている。  「沙菜と咲茉はどこかなあ」  綾乃がわざとらしく二人を探している。  ふふっと小さな声が布団から聞こえた。綾乃と視線を合わせればニヤニヤしている。  綾乃は「どこかなー」と再び声を出しながらえいやっと布団をべりっと捲り上げた。  「そこかぁああーー!!」  「「わぉあああっ」」  突然涼しくなった腹元に体を丸める。  俺の脇の下には沙菜と咲茉がいて「ママはやいー」と唇を尖らせた。  「えっ、あぶっ」  「ぎゃあ!ままおもいっ」  「重くないわよ!失礼ね!」  「わぁあ!!」  綾乃の手を引いてベッドに倒す。沙菜と咲茉は突然倒れてきた綾乃に驚きながらも楽しいらしい。けらけら笑っていた。その上から隠すように剥ぎ取られた布団を被る。  「ちょっと!パパ!!」  「俺は綾乃のパパじゃないもん」  「みやび!」  「みやびーー」  「沙菜と咲茉は“パパ”でいいんだよ」    伊織を抱っこしながら布団から顔を出す綾乃そっくりな娘たちに笑顔を向ける。  「パパ、おすしたべたいなー」  「はいはーい!沙菜まぐろとね、とろとね」  「えま、えびまよ」  「さーもんも!」  今日は娘たちのクリスマスプレゼントを買いに郊外にある大きなト●ザラスに行く。出発時刻を決めているわけではないが、早く行って帰ってくれば伊織がお昼寝できるし娘たちは早くおもちゃで遊べるという理屈で早く出かけようという。  ちなみにお昼は回転寿司に決定したようだ。綾乃の一言で娘二人も賛同した。  伊織は楽しそうににこにこ笑っている。  俺はそんな伊織の小さな頭を撫でながらベッドに寝転がりながらアレコレと寿司ネタで盛り上がっている嫁と娘を眺めた。        
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