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腹ごしらえをして目的地に到着後、娘二人は我先にとおもちゃ売り場に向かって走りだした。お腹がいっぱいで満足したのか、伊織は首を傾げて眠っている。そんな息子を抱っこ紐で吊るして胸で抱いたまま俺は綾乃とふたりでのんびり売り場に向かった。
「沙菜はキックボードだっけ?」
「お友達がキラキラ光るの乗ってたみたい」
キックボード自体あまり賛成はしない。
だが、友人の中で自分だけ持っていないというのもかわいそうだ。
「使い方は要注意だな」
「本当にね」
「咲茉は?」
「電子ピアノ」
「……あれ?そうだっけ?まあまあいい値段するんじゃない?」
「ほら、瑠莉がピアノ欲しいって言ったら家にグランドピアノ来たじゃない?」
咲茉はよく瑠莉と遊んでいる。学年は咲茉の方がひとつ上だが、誕生日は四ヶ月ほど違うだけ。小さい時からよく一緒にいたからか、今も毎日のように香月家に行く。
「あー、未玖ちゃんが卒倒しそうになったやつな」
瑠莉がこの夏四歳の誕生日を迎えた。
香月の祖父母に何が欲しいかと聞かれた時に「ピアノ!」と言ったらしい。その話は瑠莉が祖父母の家に遊びに行った時に行われていたため、凌も未玖ちゃんも寝耳に水。本当にあの家にグランドピアノが届いた時は新手の詐欺かと思ったらしい。
「凌くんところは防音の地下室があるじゃない?だからなんとかなるけどうちは」
「そうだなー。置く場所もないしな」
凌は家を建てた時、自宅で遠慮なく映画を観ようと地下室にシアタールームを作った。防音設備は完璧だ。万が一何かあったときに備えてトイレとシャワーもあるらしい。その地下室は今じゃピアノの部屋だ。ちなみに瑠莉は気が向いた時だけピアノに触るらしく特にレッスンとかはしていない。
「だから電子ピアノよ」
本当はキーボードでもいいぐらいだが。
綾乃はこっそりと本音を呟くとやれやれと肩をすくめた。
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