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「なるほどナー」
凌はキックボードを順番で乗り回す子どもたちの後ろ姿を眺めながら俺たちがここにきた理由に理解を示した。香月家は教養のひとつとして幼い頃から音楽を嗜む。凌の姉さんと妹さんもピアノを、小学生の高学年から姉はバイオリン、妹はハープも習い始めたらしい。凌はピアノだけで十分だったが思春期特有のギターに憧れ、一時期はギターを独学で弾いたようだ。
「静香か英理に聞けば多分いくつか教室は知ってると思うゼ」
「瑠莉は行かせないの?」
「瑠莉がやり始めるとお袋が喜んじゃうからナ〜。楽しく弾けるならいいケド、そんな性格じゃネェし。天邪鬼なンだよ。強制されるとやりたがらナイぜ。誰に似たのか知らねーけどサ」
言葉だけ聞いていれば困ったふうに聞こえるがその表情はとにかく柔らかい。きっと「好きなことして好きにすればいい」と凌自身が思ってるからだろう。子どもたちに何かを強制することはなさそうだ。
「怜空は最近、ダンスにハマってるんだっけ?」
「ソーソー。未玖がK-POP好きでサ。よくMVとか見てンのよ。見ながら簡単なエクササイズだって踊ってたら怜空も真似始めたンだ。最近じゃ未玖より怜空の方がハマっててサ。つっても自己流だし、できネェことの方が多いケド楽しそーにしてるからやらせてる」
凌は子どもたちの未来が楽しみだという。まあ確かにそれは一理あるが。
「沙菜は大物になるだろーナー」
「ははは。ちょっと怖いんだよ」
綾乃と亜妃(雅姉)が混ざってるからね。
でも心根は優しいし素直でいい子なんだよ。ただちょっと甘やかしすぎたかなって自覚はある。
「どんな男連れてくるか今から楽しみだゼ」
「やめろ。まだ7歳だから!」
「二十年なんてあっちゅーまだゼ?」
「そういう瑠莉こそどんな男か」
「瑠莉はオレに似て甘やかしてくれる懐の広い年上がいいんじゃネ?ま、オレとしては椿か環にもらってもらえたら万々歳だケドさ」
ナハハハハハハ、と凌が笑う。
椿と環にも選ぶ権利はあるってと言えば「今から仕込んどくか」とノリノリなのは冗談なのか本気なのかどうかは分からなかった。
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