民は王の夢を見る

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 この世界はどの国も、たったの王によって治められている。 (かれら)は皆特殊な能力(ちから)を持ち、私達はただ、王が人格者であり、少しでも長く生きてくれることを願うしかない。 なぜか王に代わりはおらず、もし(かれ)が死ねば、同時に国も民も、その生涯に終わりを告げられる。 理由はわからない。 私達は王が健康に生き、噂に聞く怖ろしい「変化期」をどうか穏やかに、 一日も早く乗り越えてくれることを、ひたすらに祈るしかないのだ。 たった一代で、しかも一人で国を背負う重圧からか、王が必ずその身を(さいな)まれると言う逃れられない「変化」。 慈悲深い女王がある日突然冷酷に。 誠実で温厚だった王がついには魔王になってしまうこともある。 けれどそれは、けっして永遠には続かない。 民が王を信じ、民が王と共に耐え、 民と王が初めて一体となってそれを乗り越えた時、 国は必ず栄えると言う。 「大丈夫じゃ!」 トラの頭を撫でながら、博士はみんなに笑いかけた。 「わしらの王はけして魔王にはならん」 「そうだよ! きっと大丈夫」 私も叫んだ。 だって尊敬する大好きなおじいちゃんが言うんだもん。 「乗り越えましょう」 姉もみんなに語りかける。 民はしっかりと(うなず)いた。
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