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ねっとりと黒い重い気持は私の心の中にあった。
それを見つけてしまった今、黒い気持が急速に体に心に広がった。
そして。
妬ましい。
羨ましい。
何で私だけがこんな思いに。
ギフトなんか自分で選べ。
いちいち店員に聞くな。
お前達の「おめでとう」なんかこっちは興味ない。
勝手にやってろ。
ギフトだけ買ってさっさと帰れ。
黒い黒い、どうしようもない感情が私の心を塗り潰そうとしていた。
「そうよ。そんなヤツらは呪われても」
──いい。
最後の言葉を口に出そうとした瞬間、私のポケットからコトリと、湊がくれたあの万年筆が畳の上に転がった。
金具がキラリと光る。
瞬間、走馬燈のように湊の声が思い出された。
『貴子は皆を笑顔を作る素敵な仕事をしているんだね。沢山のおめでとうを言えて素敵だ。これはその仕事に役に立てば嬉しいんだけど』
はにかむようにふにゃりと笑う湊。
その瞬間。
思い出した。
黒いニワカの様な重いのしかかる気持ちが急に晴れた。
私は──別れて初めて湊の事を。
自分の身勝手さを思いしって。
涙が溢れ出てしまった。
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