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同じく聞いていた影斗が、横からにやりと水を差す。
「"同じ卵"だって。あんたらと同じじゃん、ロード。仲良くしてやれよ」
「馬鹿言え、俺はあいつと双子だってことを常に後悔してる。あいつの墓前で[奴]と同じほど殊勝な口がきける気がしないな」
「うへぇ、辛辣ぅ」
オニキスの煽りを受け流すと、灯は沈黙してしまった葉月に代わり、蒼矢へ説明する。
「アズライト、あれが[侵略者]…[異形]の親玉みたいなものだな。大抵現れるのは一体で、あれを倒せば[異形]もまとめて片づけられる」
ロードナイトは、心なしか顔色を悪くしているアズライトを少し気に留めたが、フォローはどうやら事情を知っているらしいエピドートへ任せることにして、『紅蓮』を再び呼び出す。
彼らの眼前で、崩れ落ちていたはずの大量の[異形]が再び形を成していく。
「とりあえず[奴]の頭部を狙う。オニキス、頼むから調子合わせてくれよ」
「…言われなくても?」
そう声を交わすと、二人は同時に別方向から[侵略者]へ切り込んでいく。
エピドートは蘇った[異形]へ雷撃を浴びせ続け、援護と足止めに徹する。
その完璧とも言える息の合わせ方とチームワークに、アズライトはただ呆然と彼らを眺めるしかなかった。
自分がこの『彼ら』の一員になるなんて、頭では漠然と理解できても身体がついていけない。
更に今アズライトの脳内には、昨日身体に刻みつけられた"恐怖"が再び思い起こされてきていた。
別物だとはいうが見てくれは全く同じで、そもそもこれほど異質な外見をした得体の知れないものに、怖れを感じないなんてことは不可能だろう。あのぎらついた巨大な目が視界に飛び込んできてからずっと、足が動かせない。
「……っ」
…情けない…、しっかりしろ…!!
アズライトは、震える手で自分の胸を掴んだ。
そんな彼の気持ちに応えるように、再び身体の奥がほんのり温かくなる。
[異界のもの]と戦う存在としての"アズライト"になった今、"蒼矢"の時に感じた恐怖の片隅から、別の感情が彼の中に広がっていった。
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