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「…っ!」
衰え知らずな[侵略者]の執拗な攻撃に、わずかに判断を誤った影斗は迫る爪を『暗虚』でなんとかガードしたものの、体当たりまでは回避できず[異形]の濁流へ落とされる。
「オニキス!」
灯は間一髪で真下に壁を張り、高速で接近し彼を退避させようとするが、追い打ちをかける[侵略者]の爪が後方から振りかぶられた。
「っぐぁ…!!」
[侵略者]の攻撃をまともに喰らい、ロードナイトは背を反らせながら苦悶の表情を晒す。
代わりにオニキスが彼を抱えて退避し、揃って着地するとロードナイトはぐらりと膝をつく。
「ロード!!」
近寄ろうとする葉月へ頭を振って静止させるが、ロードナイトの額には玉の汗が浮かんでいた。
「…このままやっても突破口が見えない。あとは[奴]の体を一瞬で粉砕するくらいしか望みはないが…今の俺たちにそのスキルは無い…」
「……」
息切れの間にもれる彼の言に、オニキスは言い返せず、苦々しく舌打ちした。
『サルファー』がいないと、おそらく勝機は無い。
体勢を立て直し、こちらの隙を窺いながらじりじりを距離を詰めてくる[侵略者]。
迎撃姿勢を取るものの、表情を強張らせる『セイバー』たち。
「――あの」
ふいに、3人の脳内にまだ幼さの残る少年の声が降りてくる。
防御壁に護られ、後方から戦場の様子をずっと見ていた蒼矢からだった。
「あの…、[侵略者]の"急所"が判ればいいんですよね…?」
「ああ。…それが?」
「…俺…、判ります」
疲労と身体の痛みで、少し投げやりな風に返したロードナイトだったが、新入りの突然の言に眉をひそめた。
「? 何言って――…いや、聞こう。どういうことだ?」
ロードナイトに促され、アズライトは先ほどのように装具をみずからの目の前へ持っていくと、透明な刀身越しにセイバーたちの方を向いた。
「こうすると、[侵略者]や[異形]の一部分が少し光って見えるんです。…あなた方相手だと、何も起こらない」
「……」
一抹の沈黙が流れる。
全員が[侵略者]へ注視し牽制しながらも、後方のアズライトへ意識をやっていた。
装具の向こうに見えるアズライトは、水面に映る人影のように揺らめきながら、彼らへ真剣な眼差しを送り続けていた。
「…エピドート」
ロードナイトから判断を委ねられ、頷くエピドートはアズライトへしっかりと振り返った。
「…どこに光が見える?」
「5か所です。首と両腕 ・両足の付け根辺りに」
「5…!?」
「しかもそれら全て、一度は破壊してるじゃないか…」
年長者ふたりはざわめいたが、オニキスは沈黙し、[侵略者]を睨みながらぼそりとつぶやく。
「…全部同時じゃねぇと、意味無いんじゃねぇか…?」
「……!」
「…なるほど、まとめてひとつの急所か」
オニキスの言に得心したロードナイトは、攻撃姿勢を取る。
「――やってみるしかない。エピドート、[異形]どもに隙をくれてやってもいい。お前も加わってくれ」
「わかった。部位は?」
「首だ。俺とオニキスは左右から行く。…オニキス、いいな?」
「了解」
身構える3人の背中を見つめるアズライトへ、前方を向いたままエピドートが声をかけた。
「[異形]がフリーになる…アズライト、そこから絶対に動かないで」
「はい…!」
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