第11話_静と動の邂逅

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それぞれに嬉しそうな表情を浮かべるふたりを満足気に見やっていた男は、にわかに(レツ)の肩を掴んで自分に引き寄せ、小声で囁きかけた。 「…おい、お前気ぃ利かせろよ」 「? どういうこと?」 「だからぁ、レコードの一枚くらい買ってやれっての。…ついでに売り上げにも貢献しろ!」 「えぇ、何で俺が?」 「あ? あっち彼女(・・)なんだろ? ただの()友達にしては凸凹過ぎる」 「…! あぁ違うよ、あいつは…」 と、烈が言いかけた瞬間、地震とは違った感覚の地鳴りが伝わり、大きな構造物が崩れるような轟音に次いで、ショッピングモール建物中央辺りから土煙が数メートルにも膨れ上がった。 フリマ会場に溢れていた人々の動きが一瞬止まり、一斉に音のした方角へと振り返る。 周囲がざわつきだす中、ふたりとサングラス男も売り場から顔を出す。 「? なにごとだ…っぷ」 烈は反射的に土煙があがった方へ走りだそうとするが、サングラス男の腕に止められた。 「やめとけ、ありゃなんかの事故か…下手したらテロかもしれねぇぞ」 「…テ…!?」 その言葉に、羽交い絞めにされる烈と棒立ちになっていた蒼矢(ソウヤ)が、揃って彼を見上げた。 急に固まってしまったふたりの表情を見、男は緊張を和らげようとしたか、にやっと笑ってみせた。 「…まぁ、早いとこ逃げとこうぜ。安全な場所まで送ってやるからさ」 「で、でも…売り場は!?」 「あー、これはいいや放っておいて。どうせ俺のじゃねぇし」 「ん、えぇ!? いやそれにしたって――」 そう男の言い草に思わず突っ込む烈の隣で、蒼矢が鳩尾(みぞおち)辺りを押さえながら座り込む。 「? どした、蒼矢…!?」 男の腕から逃れ、烈はその肩に手をかけるが、蒼矢は顔を地面へうつむかせたまま動かない。 胃にこみ上げてくるような不快感と、景色が大きく揺れるような眩暈。 …この感じ…、もしかして…… 「……!」 霞む視界に、淡く発光する自分の胸元が映る。 徐々に悪寒が増していく中、ペンダントを隠すように、シャツ越しに手をかけた。
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