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第12話_双生の攻撃手
ほどなくして、サングラス男の待機場所に駆けつけた灯が合流した。
[異界のもの]の気配にあてられ、いまだ身体が不調な蒼矢だったが、ぼやけそうになる眼で真剣に灯と男の顔を見比べていた。
「おせーな、在宅サボリーマンなんだから秒で来いよ」
「卒論放棄してて、就活もまともにしてない奴にだけは言われたくない。なんだその格好は。今日企業説明会だったはずだろ」
「うっ」
「あと、今朝から俺のレコードコレクションが根こそぎ消えてるんだが、まさかお前――」
「っあーっと! それより、こいつ」
察しのついた灯の表情が険しくなったところで、男は彼の話をぶった切って傍の蒼矢を自分の前に持ってきた。灯は片眉を少し上げ、蒼矢を一瞥する。
「聞いて驚け。こいつは俺たちがタイムリーに噂してた、まぎれもねぇ5人目の――」
「あぁ…蒼矢、君も来てたんだな。晃司と一緒だったのか?」
「…え?」
"晃司"と呼ばれた男は、灯へ向けて鼻を鳴らしながら得意気に語り始めようとしたが、さらっと流され、目を丸くする。
「…お前…、知ってたの?」
「この前、お前が参戦できなかった時に。これで二度目だな」
虚を突かれたように固まる彼に、灯は涼しい顔で言ってのけた。
「あっ…灯てめぇっ、そんなこと一言も報告なかったじゃねぇかよ!!」
「大事な時期である今のお前に波風を立てないよう、配慮したつもりだったが」
「絶対違うだろ! 面倒になっただけだろっ…」
啖呵を切りかけたところで、灯は胸元から紅い鉱石を取り出す。
「無駄話はこの辺で切り上げだ。さっさと移動するぞ」
「……!」
晃司を黙らせると、灯はふたりのやりとりを見守っていた蒼矢へ視線をやった。
「葉月は遠方に外出中で来れないそうだ。影斗は…まぁ期待できないだろう。…不安だろうが、君の力が必要だ。行けるか?」
「! はい。…あ、あの」
「ん?」
返答を受け、転送準備に入っていた晃司と灯が同時に振り返る。
蒼矢は彼らを見比べるように、交互に視線を送っていた。
「あの…お二方は」
遠慮がちなそぶりを見せる彼からの質問に、ふたりは何事かに気付いたように見合ってから、同時に返答した。
「腹立たしいが、双子だ」
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