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『転異空間』へ転送した3人は、どこまで見渡しても白く、地平線の彼方まで鈍色の地表で満たされた空間へ降り立った。
「んだこの地面。鉄板かなんかか?」
黄を基調とした戦闘スーツに変身した晃司――『セイバーサルファー』は、着いて早々不機嫌そうに地をガンガンと踏み鳴らす。
「不用意に音をたてるな。…気分は?」
「大丈夫です。『この空間』に来ると治まるみたいです」
灯――『ロードナイト』に声をかけられ、蒼矢――『アズライト』はしっかりと頷いてみせた。
「鋼属性か? …だとしたら厄介だな…」
ロードナイトが独り言のようにつぶやく中、上空から彼らを取り囲うように、数体の楕円型の[異形]が降下してきた。そして、それらの一回り内側に、一体の人型が降り立つ。
一見人間と変わらない容姿に見えるが、髪の毛と両腕の肘から先が地面と同じ鈍色で、金属のような光沢を放っている。
「…[侵略者]か。大体いつもVIP登場なのに、もうお出ましか?」
侵略者――[鉛鎖]は、遠目で見渡すようにセイバーたちへ一人ずつ視線をやった。
「おい、ジロジロ見てんじゃねぇ、見せもんじゃねーぞ!」
「――『水使い』はどれだ?」
「あ?」
早くもメンチ切り出したサルファーには応えず、[鉛鎖]は3人を眺めながら問い質す。
思わず素の声が出てしまったサルファーと眉をひそめたロードナイトを流し見してから、無反応のままのアズライトを凝視した。
「…お前だな」
そうぼそりを漏らすと[鉛鎖]は目を見開き、ノーモーションで瞬時にアズライトへ距離を詰める。そして指の先を鋭い金属片に変えて振り被ったところを、寸ででロードナイトが前に入り、壁で受け止める。
透明な壁に刺さった爪の先を一瞥してから、[鉛鎖]は鼻の先のロードナイトへ真顔のまま語りかける。
「俺の目的は『アズライト』だけだ。…労力の無駄になる、邪魔をするな」
「っ……!」
そう言う最中、壁に喰い込む爪が徐々に赤く発光し、ずぶずぶと壁の内側まで到達していく。
ロードナイトは太刀の装具『紅蓮』を呼び出し、壁越しに[侵略者]の腹部へ一閃する。
装具が壁を突き抜けて体に入る直前、[鉛鎖]はひと跳びに後退した。
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