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すぐさま晃司が[侵略者]と灯の間に入り、細剣の装具『閃光』の切っ先を向ける。
「てめぇ…舐めた真似してくれるじゃねぇか。うちの新人にどういう了見だ?」
「そもそもお前たち『セイバー』共は[異界のもの]にとって妨げになる存在だが、中でも『アズライト』は害悪でしかない」
「何言ってんだ? わかるように説明しろ!」
「…お前は『そいつ』と同類のくせして何の知識も無いのだな。加えて知能も極めて低そうだ」
「な…に!?」
「おい、落ちつけ低能」
[侵略者]の言い様に一瞬で憤激したサルファーへ向けて、ロードナイトは脳内から制する。
「!? おまっ…」
「『アズライト』の能力は『索敵』だ。どうやら[異界のもの]の致命部位が見えるらしい」
「…!」
またしても怒りかけたサルファーだったが、目を見開いて止まり、蒼矢へ振り返った。
さきほどの不意な攻撃を受け、強張った面持ちで佇んでいる彼を見、固まっていたサルファーはやがてわずかに口の端を上げた。
「…はっ…、そいつはすげぇな」
「ああ。でも手放しには喜べなくなった…まさか[奴ら]の方が『彼』に関して造詣が深いとはな。そしてやはり、『索敵』は奴らにとって厄介らしい」
淡々と返すものの、ロードナイトの表情は硬い。その様子を見て軽く舌打ちすると、サルファーは[鉛鎖]へ向き直った。
「――で、その害悪をどうするって?」
「このまま野放しにしておく理由は無い、今回で確実に仕留める。…"搾取"はついでだ」
「相変わらずきめぇ台詞しか吐かねぇ奴らだな。細切れにして精錬屋に売り飛ばしてやるよ」
攻撃態勢に入るサルファーへ、ロードナイトが脳内から低く声を掛ける。
「俺が[侵略者]をやる、[異形]はお前に任せた。正直、周りにかまけている余裕はないからな…撃ち漏らすなよ」
「俺を誰だと思ってんだ? お前こそ大丈夫なんだろうな」
「この面子でこれ以上の最適解は無い。超速で片付けるぞ」
「…了解」
ロードナイトは、アズライトの周囲に再び防御壁を張った。
「覚醒して早々狙われるなんて想定してなかっただろうが、俺たちの能力や装具を奪おうとする輩はたまに出てくるから、無い話じゃない。手短に終えるには『君』の能力が不可欠だが…『索敵』は出来るな?」
「はい…!」
「前回同様壁は作るが、回避行動が取れるよう身構えていてくれ。…おそらく俺の防御属性は、[侵略者]と相性が悪い」
冷静な中に一握りの緊張感をにじませる彼の口調に、アズライトは固唾を飲む。
「…はい!」
手のひらに呼び出した短剣の装具『水面』を握り、大きく見開く両眼の前に構えた。
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