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第13話_誘う嬌艶の香
[鉛鎖]は金属質の両掌から鈍い光沢を放つ刃を生やし、再び蒼矢へ接近する。
それを間に入った灯が『紅蓮』で受け止めて押し返す。
地力はロードナイトの方が一枚上手のようで、彼の腕力と紅蓮の出力に[鉛鎖]はじりじりと後退していくが、にわかに頭を振り髪の毛を刃の形に変える。
「!!」
敵の三つ目の得物が迫る直前で、ロードナイトは紅蓮の切っ先に炎の力を溜め、[鉛鎖]の眼前で爆発させる。
「……」
距離を取った[鉛鎖]はやや苛立つような面様を見せるが、『索敵』を続けるアズライトを一瞥して再び眼を剥くと、視線の直線上にアズライトを守るように構えているロードナイトへ二度ぶつかっていく。
そして彼らの周囲では、十数体の[異形]が[鉛鎖]の挙動に合わせるように動き、楕円の胴体全身から針状の突起を生やしてロードナイトへ向け一斉射出する。
が、その一点に集約されていく軌道は逆方向からの金色の放射線に遮られ、蒸発して消え去った。
「てめぇらの相手は俺だよ」
異形に囲われるように中央に立ち、『陽光』を頭上に配置した晃司は、『閃光』を両手に構え、不敵に笑った。
「…初っ端から出力最大で相手してやるよ。涙流して拝みな」
彼へ向け標的を変えた[異形]たちからの第二波を、陽光から生み出される無数の光の矢が迎撃する。その弾幕の合間を光速に劣らぬ速さで縫うように飛び回りながら、サルファーは閃光で[異形]を一体ずつ仕留めていく。
[鉛鎖]は両腕と髪の刃の3点でロードナイトへ襲い掛かっていた。ロードナイトは太刀と火炎で渡り合うが、拮抗した状況が続く。
頭の片隅で防御壁を気にかけるものの、攻め続けられ位置取りまで保つ余裕は無く、意図せず内[侵略者]に吸い寄せられるようにアズライトから離されていく。
わずかに焦燥感を表出した相手の変化を見逃さなかった[鉛鎖]は、背面から新たに三叉の鎖を生み出すと、ロードナイトの脇をすり抜けて後方へ向けて放った。
「…! アズライト、攻撃がいった、備えろ!!」
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