シュガープラム

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 並んで改札まで言葉を交わす。聞けば、今回のようなことは初めてではないという。 「我慢してれば……いいかなって」 「それはおかしいよ」 「だって、声を出すのも恥ずかしいし」 (ああ、分かる。私だったらそうした)  歩くポケットの中で金平糖がカランと音を立てた。  少し迷ったが、缶をその子の手に握らせる。 「これは私の知り合いからもらった『なりたい自分に変身できる金平糖』なの。クジ運がない私でもくじ引きで一等を当てたり、気になる人と話ができたりしたから、きっと本物よ。残りは一つだけなんだけど……だまされたと思って試してみて」 「でも……」 「信じる者は救われる、大丈夫よ」  ぐっと親指を立てて手のひらを握り込んだ。ここは貴子さん直伝の笑顔。 「葵、のんびり歩いてると遅刻するぞ」  呼びかけられた声に心臓が跳ね上がった。 (え? 名前……!?)  早くと促されて頷いて、女の子に手を振って改札へと急いだ。  途中、人ごみにもみくちゃにされそうになって、手を引かれて…。 (まるで、彼氏ができたみたい!)
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