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「彼女、知り合い?」
「今日初めて会った。電車の中で悪戯されてるのを黙って見ていられなくって……お節介だったかな」
「へぇ、大人しいのかと思ったら案外勇気あるんだな」
(あるわけが無い。本当にたまたまだ)
「俺だったら、見て見ぬ振りするな」
「今までの私もそうだったと思う。運命を変えたんだもん」
歩行者信号が青に変わった。流れ出す人の波。軽快な人工的な鳥の鳴き声が響いた。
今日は日曜日。場所はsugar plum。
件の金平糖の効果について報告し終わったところだ。
貴子さんはカウンターの内側で頬杖をついてとろけそうな笑顔を向けてくる。
「へぇぇ、そんな効果があったの」
「……ピアス開けたいなんて、早まらなくって良かった」
「うん。そうだね。これから彼とデートなの?」
「うらやましいでしょ?」
「あついあつい。エアコンが壊れちゃいそう。若いってうらやましい。なにかあったら優しい貴子さんが相談に乗ってあげるから頑張っといで」
葵は小さくつぶやいて腕時計を確認して席を立つ。
扉を開ける前に思い出したように貴子さんに小さく手を振った。
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