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※
背中にじっとりとした視線を感じて振り返った。
もうすぐお昼のこの時間は美樹さんが手伝いに来てくれているのだ。
「――貴子さん。あのクジって、発注間違いで一等ばかりが入ってるやつですよね?」
「うん。そう。嘘は一個も言ってないよ」
「……金平糖も」
「風光堂の缶入りの金平糖でしょ? あの缶入りはネット販売の限定品よ。残りが少ないのは私の食べかけだからだもん」
「もしかして葵ちゃんをだましたんですか?」
「人聞きが悪いなぁ、ちょっと迷ってるコの背中をお姉さんが優しく押してあげただけじゃない」
『なりたい自分に変身できる金平糖』――そんなものがあるわけがない。
ただの金平糖も思いを込めて食べれば特別なものになる……かも。
カラン、と涼やかなウインドチャイムの音。
「ほら、お客様よ」
通りに面した窓ごしに見えたのは楽しそうに腕を組んで歩く二人組。
とろけそうな笑顔の葵に手を振り返してエプロンのひもを引き締めた。
「さて、今日も頑張りますか!」
※拙作をお読みいただきありがとうございます。
アイディアがあってもギリギリまで書こうとしない( ̄▽ ̄;)
ほんっと、困った黒熊です。
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