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手のひらに人差し指を突き立てる仕草を見て言葉を失った。
「耳たぶに穴をあけるんだもん、当然じゃん」
注射針でさえ怖いのに、そんなの無理である。
「ムリムリムリ! そっ、そんな痛そうですっ!」
「別に開ける瞬間は痛くないよ、一瞬だし。あたしらが学生の頃なんかはお金がなかったから友達どうして安全ピンを――」
「――!! 無理です、ダメですっ!」
想像しかけて、思考のリミッターが切れた気がする。
ぐったりとカウンターに突っ伏した。
(ない。絶対にない!)
「仮にそれができたとしても葵ちゃんは高校生でしょ、自分の体を傷つけるには早すぎるよ」
涙目になった葵を慰めるように伏せた頭をぽんぽんと撫でてくれる。少しごつごつとした手が心地よい。
「葵ちゃんはどうして運命を変えたいなんて思ったの?」
「その……。笑いません?」
上目遣いに貴子をうかがうといつも通りの人懐っこい顔にほっと胸をなでおろした。
はっきり言って目立たない。身長も体重もついでに成績も平均。中の中。筋金入りの凡人。
目立つことが苦手で授業中にあてられると耳まで真っ赤な茹でダコになってしまう小心者。そんな葵が変わりたいと思ったきっかけがある。
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