シュガープラム

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 その日のことは忘れられない。ひどく暑い日でなんだか雲行きが怪しかった。不安が的中してむくむくと沸き立つような鈍色の雲がたちまち空を覆った。上空で閃いたカメラのフラッシュのような光。間を置かず轟いた引き裂くような雷鳴。目を閉じて耳を塞いだ。 (雷は苦手なのだ)  走り抜けた冷たい風。  すぐさまアスファルトを叩きつけるような雨粒が降り注ぐ。見る間に街が白く霞んだ。雷と雨に追い立てられるようにこの店に逃げ込んだ。  びっくりした顔の貴子さんはびしょ濡れの葵を優しく迎え入れてくれた。タオルを貸してくれた上に着替えまで貸してくれた。  これがこの店に入り浸るきっかけ。 「葵ちゃんのおかげでこの店を続ける気になったの」 (あの時はこっちも助かりました) 「これはもう残り少ないし食べかけで悪いんだけど……葵ちゃんにあげる。怖い思いをしてピアスを開けるよりも簡単でしょ?」  ひねってフタを開けると大粒のピンク色のトゲトゲがついた金平糖が五つ。 「――嘘だと思うなら試しに一つ食べてみて。実証実験よ。運試しをして運気がアップしたかどうかを確かめてみようよ」  これまたごそごそとカウンターの奥を漁り始める。次はいったいなにが出てくるのだろうとワクワクしながら待っていると赤と白の四角い箱を引っ張り出してきた。箱にはラッキーお楽しみクジの文字。 (まるでどこかの猫型ロボットみたい)
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