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終章
オレと愛犬シーズーのシーは、早朝の散歩の途中で、国道4号線沿いにあるラーメンチェーン店の待機用ベンチに腰かけてひと休みをする。先ほどより、東の空がパステル画のような不思議な色に染まりはじめていた。スカイブルーのショルダーバックのなかのiPhoneからは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が流れている。
ラフマニノフが、うつ病から何とか立ち直って作曲したというピアノ協奏曲第2番。とくに精神が解放された歓びを謳い上げる最終盤の第3楽章において、以前よりオレは宇宙の鐘の音が響いているように感じていた。
小学生の頃、オレは「森」の中央の、幅の狭い小川で、はじめて神の存在を感じたような気がした。そのとき感じた感覚を恥ずかしくもそのまま伝えれば、ウルトラマン=イエス(神)という公式だったと記憶しているが……
いまオレは、スカイブルーのショルダーバッグから、朝陽に白とゴールドの体毛が眩く輝くもうひとりの神の子、シーのオヤツを取り出そうとして、小さなぬいぐるみを地面に落としてしまった。そうカナエの形見の、もうすっかり古びてしまった白い仔猫のぬいぐるみを……
そして最後に朝陽に向かって誓いたい。いつの日にかオレはもう一度、青銅色の夜空に煌めく星たちに向かって、カナエの形見であるこの古びた白い仔猫のぬいぐるみを右手で宙空に突きあげることを。白とコールドの体毛の、シーの顔がまさにほのかな銀色に変わるだろうと確信しながら……
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