金払いの良い客

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金払いの良い客

 カノープスは、金髪と白い陶器の美しい義足が特徴の男である。犯罪者ばかりを集めた集団を運営している。  元いた巨大な集団では下っ端で、若さゆえの一寸した失敗をして、両足を自ら斬り落とす羽目になったカノープスは、自分では歩けないというハンデを抱えている。同業者ばかりのこの世界で、何とか生き残って来られたのは、持ち前の手腕と冷酷さを活かし、ある種の「崇拝」という感情を集めて集団を引っ張って来たからだ。  だが、まだまだ集団は小さく、金が必要。故に、金払いの良い客からは積極的に依頼を請け、なるべく望みどおりにしている。  今回の依頼は、一人の命を奪うだけで、一千万円を払ってくれるという。酒場に行っていただけで、偶然、良い客に知り合えた。カノープスは早速、標的を探し、執務室に呼び出して、縄で縛り上げた。  標的はカノープスの部下に依りタコ殴りにされ、顔が腫れ上がっていて、もはや性別も良く分からなかったが、兎に角必死になってこう言った。 「少し、もう少し待ってください」
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