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推しのカードは初日でもちろんGETしている。
今狙っているのは、もちろんさらに推しのカード、これで完凸するのだ。
推しイベは来て欲しいけど、来て欲しくない。
おかげで財布がもぬけの殻だ。
いや、その分推しの笑顔で生きてるんだけど。
誕生日ガチャの分も考えると破産だ。
いやいいよ。
バイトで稼げばいいし。
とりあえず走る。
走る。
走る。
遥か彼方の水平線並みに走る。
大抵推しイベの予告が来た瞬間やっべ、まじか〜来ちゃったかー今はやめて欲しいな〜誕生日もあるしさぁ、って思うけどイラスト見た瞬間財布を手に取るよね。
きらめく推しを拝むためだけに走る。
しばらく走っていると、充電20%を知らせる通知が届く。
無視。
とりあえず10%までは走り続ける。
指という指が限界に達している。
耐えろ、耐えるんだ。
推しの笑顔と指、どちらが大切かわかるだろ?
推しの笑顔にきまってるでしょー???
初めてイラスト見た瞬間語彙力が飛んだのを覚えている。
ほぼ毎回だ。
喋る言語が人語じゃなくなる。
ウホッwwwミズッミズギトカwwwwwウンエイマジカミ~~~~~~~~♥
走り続けて約3時間。
残り10分。
このままのペースであれば、完璧だ。
きらめく推しがバージンロードを歩いてくる姿が目に浮かぶ。
グヘッw
もっと余裕を持ってとるのがベストなんだが、なんせテストという世界を渦巻く敵と戦っていたからな。
ここまで来れた方がすごいだろ。
スマホに10%を示す通知。
これにはさすがの私も充電器に手を伸ばす。
しかし、横にあった天然水を落としてしまった。
やばっと、拾い上げる。
しかし、遅かった。
時短のために開けてあったペットボトルは、弧を描きながら水をぶちまけた。
悲鳴にならない生物の奇声を発しながらティッシュをとる。
ひたすらに拭く。
今思えばタオルの方が絶対効率が良かった。
その時親の声。
「早く風呂に入りなさい。」
しかし、両耳にワイヤレスイヤホンをつけた私は気が付かない。
単純に馬鹿だ。
部屋に入ってきた母も声にならない悲鳴。
それに重なる私の奇声。
水浸しになった床を見た母は、タオルを持ってきてくれた。
そして机を見て、母と私は絶叫。
「なんで勉強してないのよ!?」
「充電切れたァー!」
待って、あと残り5分なんですけど。
充電器を手に伸ばそうとするがその手を拒む母。
待って、いやほんとに待って、あと残り5分なんですけどまじで。
5分待って、ガチで、何でもするから。
充電器を素早く取り、スマホに繋ぐ。
暗くなった画面を震える手で何度もタップ。
母のお説教はほぼ耳に入っていなかった。
バージンロードが三途の川に変わった。
パッと明るくなった画面を高速で操作していく。
イベント画面に移動した瞬間、私の指が止まる。
…あれ?イベント終了日。明日?
私は恐る恐るガチャのボタンを押す。
そこに記された今日の日付。
どうやらイベント終了日とガチャの終了日を見間違えていたらしい。
あっ、あっ、あっ、orz。
我が生涯に一片の悔い無し。
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