【 ペチャパイ 】

1/1
前へ
/17ページ
次へ

【 ペチャパイ 】

「よう、ペチャパイ美玖」 「バカタレ! ペチャパイちゃうわ!」 「美玖は、ペチャパイだろ?」 「ペチャパイ、ペチャパイ言うな! ちょっとずつ大きくなっとるわ!」  一緒に図書館へ行くというのに、彼は朝からこんな調子。 「じゃあ、俺の母さんみたいに大きくなってみろ」 「静香おばさんは、普通の人より特別大きいのよ! それと比べるな!」  私はプクッと頬を膨らませ、唇を(とが)らせた。 (絶対に、タカヒロ君を振り向かせてみせる!)  そう、心に誓った。  ――夕方まで、彼と一緒に図書館にいたが、結局、席はソーシャルディスタンスでずっと離れたままだった。  帰りも一緒に帰ったが、またペチャパイの話だ……。  彼と別れて、それぞれの家へと戻った。 『パタン』 「はぁ~……」  大好きなのに、どうしても素直に告白できない……。  自分の部屋へ戻ると、机の上のポップコーンが目に留まる。  このポップコーンでまた、タカヒロ君と恋をしたい……。  そんな誘惑にかられる……。 「1回に3つまで食べていいんだよね。ということは、MAX3時間タカヒロ君と恋ができる……」  誘惑に負けて、紙コップからポップコーンを3つ取り出して、手の平に乗せた。  そして、それを勢い良く口の中へ。 「モグモグモグ……」  すると、また意識が遠のいて行った……。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加