【 アレ 】

1/1
前へ
/17ページ
次へ

【 アレ 】

 私はベッドから飛び起きて、部屋にある鏡で自分の姿を見た。 「えっ……? 何で……?」  そこに映っていたのは、彼のお母さん。  そう、タカヒロ君のお母さん、あの妖艶(ようえん)で美しい『静香(しずか)おばさん』の姿だった……。 (ど、どうして……? どうして私、静香おばさんの格好になっちゃったの……?) 「母さん、お腹空いたね。朝ご飯、食べよっか」  彼はベッドで横になりながら、私の体を嬉しそうに眺めている。  私は思わず、彼に合わせて、こう言った。 「そ、そうね……。ちょっと、朝食の準備してくるね……」  急に恥ずかしくなり、脱ぎ捨ててあった下着とパジャマを持って、彼の部屋を出て行く。 『バタン』  部屋の扉を閉めて、飛び出しそうな心臓を押さえ、何度も深呼吸をした。  なぜこんなことになっちゃったのか……?  昨日まで、私は彼の同級生の『美玖(ミク)』だったのに……。  心当たりはある……。  あの謎の占い師にもらったもの……。  アレが原因に違いない。  そう、あの謎の『』だ……。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加