【 恋占い 】

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【 恋占い 】

 その占いの館へ入って行くと、ゆっくりとした口調で「いらっしゃいませ。中までどうぞ」と言われた。  薄暗い室内に、そのふくよかな占い師らしき人は、怪しい黒い衣装を(まと)い私を見て笑う。 「あ、あの、恋占いをして欲しいんですけど……」 「分かりました。どうぞお座り下さい」  ――それが、昨日の夕方の出来事。  そして、その怪しげな占い師にこう言われていた……。 「あなたは、その好きな男性とは結ばれることはありません」 「えっ? そうなんですか……?」 「はい、決して恋を成就(じょうじゅ)することはないでしょう」 「そ、そんな……。な、何か方法はないんですか……?」 「一つだけ、あります」 「ひ、一つだけ……?」  そう言ってもらったのが、この今手にしている『ポップコーン』。  何の変哲(へんてつ)もない、青い紙コップに入ってプラスチックの(ふた)がしてある、見た目はただのポップコーンだ……。  このポップコーンの値段が『1万円』とかなり高い。  高校生の私のお小遣い1ヶ月分だ。  でも、これを食べると恋が成就するという……。  本当だろうか……。  しかし、私には時間的な余裕が無かった。  なぜなら、今は高校3年生。大学受験に失敗すれば、彼と同じ大学へは進学できない。  だから、どうしてもこの高校3年生のうちに、彼との恋を成就させたかった。  私に迷いは無かった。  というか、(わら)にも(すが)る思い。いや、ポップコーンに縋る思いというのが、正確だろう……。
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