11月第4水曜日

2/4
前へ
/27ページ
次へ
 違う。何かしっくりこない。  こんな台詞言わせるつもりは……良いけど、使うなら一場目も修正しないと。どうするか……  登場人物の動機が見えない。モノローグで長く語らせるのも不自然だし、それだと「全員に同等の重要度」の条件も怪しくなる。  そもそもこのストーリーでいいの?  たとえばもし、ここで真逆のことを言わせてみたら……  その考えが頭をよぎり、呼吸が止まった。  ……どうする?  鼓動が痛い。  どうにか一幕最後まで進んだのに。  締切まで一週間。ここで変更なんて……そんなことをしたら完成さえできるかも怪しい。  完成できないと応募もできない。なら、今のままで……  時間を見ると、夜の十一時。日本は朝八時。  癖のように計算してスマートフォンを手に取る。  柴山さんから連絡はない。  担当のテレビドラマの放送は今月で終わる。情報を見る限り人気も視聴率も申し分ない、成功と言っていい仕事だろう。  私がそれを観てないのは国外にいるからだけじゃない。  観たくないのだ。  ヒロイン役の女優は、以前何かの雑誌で柴山京介の脚本で演じたいと公言したことのある人。柴山さんからそう聞いた。  そんな女性を思い浮かべながら書いたものだと思い出す。それだけで楽しめなくなると気づいてしまったから。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加