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日々もらう連絡は嬉しい。構ってほしいと願う。
なのに、余計な心配はかけたくない、重たい女になりたくないとも思ってるのだから、感情は理解できない。
私がなりたいのは「あなたと肩を並べられる脚本家」なのだろうか。それとも、ただあなたの隣にいられる……
「舞子、お茶淹れる?」
ドアの向こうで声がした。返事もしないうちにケイティが部屋に入る。
「……誰から?」
子供をあやす親みたいに訊く。
また叱られた気になる。
情けない。
「連絡じゃない。近況を確認してただけ」
それでも正直に回答したのは、とにかく誰かと話していたかったからなのかもしれない。
「誰の?」
「日本にいる同業。彼は順調に仕事を得てるみたい」
「彼?」
はっとする。無意識の英語の代名詞で性別を明かしたと気づいた。
ケイティがベッドに腰掛ける。私はごまかすようにノートパソコンに向き直った。
「いつも連絡取ってる人? この前もケータイ見て笑ってたけど、あの時も?」
小さく頷く。
「だから、私も良い結果出さないと」
「笑顔で会うにはそれしかないから?」
キーボードに浮かせた手が止まる。
「……それしかない」
隣の視線がむずがゆい。
ケイティがくすっと笑った。
「彼に会いたい?」
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