変身願望

　私には変身願望がある。とにかく、彼らが羨ましい。彼らになりたい。
　あいつらはいいよな。毎日浮かれて、なんだか人生楽しそうだ。何を食うか、どこで飲むか、何して遊ぶか……。耳を傾けてみるとそんなことばかり話し合ってやがる。そうやってのんきに遊んでいろ。今に幹部の連中がお前らを奇襲してやるから。しかし。しかしだ。幹部連中と私たちザコがどんなに暴れまわったところで、あいつらは必ず助けてもらえるんだ。そう、正義のヒーローに。あいつらと同じような姿をし、あいつらに紛れて遊びまわっていたかと思えば、突如変身して私たちの前に現れる。そして私たちはやられる。一瞬にしてやられるのだ。私たちザコも、幹部もいなくなったあと、あいつらはまた何事もなかったかのように遊ぶ。食べる。飲む。ちくしょう、こっちはもう何ヶ月も薄くて不味い酒しか飲んでねえよ。
　いいな。いいな。羨ましい。私も幹部の手先のザコに紛れて暴れまわっていたかと思えば、突如変身して身の安全を保障されたい。私もあの、「人間ども」に変身したい。