第1章 アルバイト

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えっ!? もう始まるのか!? 私は肩を上下にさせて深呼吸をした。いつもと少し違う伯父さんが、私の方へと向かってきた。 「大丈夫だよ、頑張って」 伯父さんはいつもの笑顔に戻り、小声で私に言った。 「あ、ありがとう……」 「その格好、よく似合っているよ」 「よっしゃ燃え上がってきた!」 伯父さんはわざと言ったのか? それとも本気で? どちらにせよ私のHPはMAXになった。感謝するぜ伯父さん。私はマントをさっと広げて、ステージへと歩き出した。 一気に明るくなった。聴衆がざわめいている気がするが、私は風でマントが揺れていると思い込みながら足音を立てた。 ステージの真ん中で足を止め、ようやく視線を前に向けた。彼らはたぶん……いや絶対口を大きく開けて私を見つめている。マスクとはいいものだ、顔を隠せるし……ってあれ、何故か手が震えているぞ。だめだ、変なことを考えるな、私は…………! マイクのスイッチを入れ、小さく息を吸い、禁断の言葉を呟いた。
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