第8章 卒業式

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耐えてた分、大粒の涙が頬を伝う。拭っても拭っても、次々と溢れ出す。 上手く言葉も話せず、胸も詰まりづまりで熱い。その場にしゃがみ込みそうなくらい、足がすくむ。歯を食いしばり、何度も目を擦った。 それから長かったのか短かったのか、私には想像もつかない時間が経った後、隣に立つ夜宵君が動いたのが音でわかった。 手の隙間から、涙にまみれて微かに見える夜宵君。その姿がぼやけて、さらに涙を拭こうとした途端。 私は何かに包まれた。私の前から、温かい何かに。事態を把握しようにも身動きが取れず、でも、柔らかな感触と優しい香りで、私はようやく知った。 いつもより近くて、1番近い2人の距離。夜宵君の腕の中で、私も必死に手を回す。華奢だと思ってたけど、触れると熱くて大きな背中。 きつく抱きしめられると、息が苦しくなって、それでももっと欲しくなる。応じるように、私も手に力を込める。 お互いの吐息が聞こえる。涙も乾いていないのに、夜宵君の胸に顔を埋めると、トクン、トクンと優しくも速い鼓動が鳴っていた。 ゆっくりと腕の力が抜け、私と夜宵君は見つめ合った。 「……ごめん、ずっと触れたかった」
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