振り払えないモノ

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僕等の出会いからそれなりの時間が経った。 あれから僕達は、密室で共に汗を流して、くんずほぐれつをする様な関係になった。 毎日、ビショビショのぐっちゃぐっちゃだ。 これ以上ないくらい彼女とは仲良くしてて、殆ど毎日といっていいほど、最高の肉体のコミュニケーションをしている。 なんなら仲が良過ぎて、僕は年中ボロボロだったりもする。 そう。つまり彼女は凄くアレが強くて、その上、ものすごく好きなのだ。 相手をする僕は、いつも骨の髄まで吸われている。 何時だって、僕はボコボコさ。 まぁ、つまりは組手をやる仲になったってこと。 で強過ぎて女子では相手のいなくなった彼女は、男子を相手にしているのだ。 そして、階級やら体格なんやらで丁度いい具合の僕が良く組まされる。 同階級ぐらいの男子だと、彼女に勝てやしないからね。 「おつかれさま」 「おつかれ」 僕達は練習が終わり、帰り支度を整えた僕に、彼女が声を掛けて来た。 「私達の出会いって、考えたら凄いよね」 「いや、もう忘れてくれよ。恥ずかしくて軽く死ねる」 「忘れないよ」 「組手で体だけじゃなくて、僕の心までボロボロにする気?」 「かもねぇー」 「まったくドSだね君は」 「なんて冗談だよ」 「いやいや、現にいつも心身共にボロボロですよ? 毎日女の子にボコボコにされてるんだからさ」 「ありがとね」 「?」 「あの時、声を掛けてくれてさ」 「…………いきなりなんだよ」 「あの時、スランプでさ。空手辞めようと思ってたんだ」 「そっか」 「うん」 少し照れて、はにかんだ彼女は、優しい顔だった。 「じゃあ今度、君が辞めたくなったらさ」 「うん」 彼女は僕の瞳をジッとのぞき込んでいる。 「君より強くなった僕が、君をベンチに座らせるよ」 決め顔で言ってやった。 「大丈夫。それは一生ないから」 「なんですと__っ⁉」 文句を言おうとした僕の頬に、彼女の唇が触れた。 「おふぅ」 「ふふ」 彼女は満面の笑顔だった。 きっと僕は一生彼女には勝てやしないんだろう。 でも今度は、本当に何があったとしても、彼女を守れるように、 彼女が笑顔で何時もいられるように、 今よりもっと強くなろうと、僕は決心した。
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