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名前も知らない君。
この先、君と僕の人生が重なることはきっとないだろう。
悲しいことだけど、その事にホッとする自分もいる。
そんな自分を情けなく思うけど、受け入れてしまっている自分もいる。
それとも僕に勇気があれば違うのだろうか。
君に声を掛けることが出来たなら、何か変えることが出来るのだろうか。
いや、きっと何も変わらない。
だって、失敗する未来しか想像できないから。
公園で見かける君。
アパートへの帰り道、寂れた遊具が置かれているその場所に君はいる。
仕事が早めに終わり、子供達もすっかりいなくなった夕方に見かける。
近くに住宅街があり、商店街もあるから、ここより少し先に進めば人通りは多い。大抵、君はブランコに乗っていて、ベンチに座っている事もある。
だから、君は誰かに見つけて欲しいのかな。
体や顔によくアザを作っている君。
佇み、下を向く姿は、助けを求めている。そんな風にも見えることがある。
でも、僕はヒーローじゃない。
そのアザは、多分事故じゃないよね。
そもそも、そんなに頻繁に怪我なんてするわけがない。
僕に力が在れば、
知性があれば、
何よりも勇気があれば。
この胸の疼きを止めることが出来るのだろうか。
君を見かける度に胸が締め付けられる。
義を見てせざるは勇無きなり。
そんな言葉が浮かぶ。
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