振り払えないモノ

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「ちょっ! わっわっわっ!」 情けない声を出しながら、突然自分に訪れたわけのわからない感覚に混乱していると、 「ヨイショッと」 僕とは随分と温度差のある、ゆったりとした声を彼女は出した。 浮遊感が無くなると、僕はベンチに置かれていた。 どうやら、僕は持ち上げられて、ベンチに座らされたようだ。 「どう? 落ち着いた」 「…………」 彼女の顔が、僕の顔の直ぐ目の前にあった。 先程とは違った恥ずかしさで、今度は声すら出せなかった。 ツンとした汗の匂いと、彼女が使っているだろうシャンプーの香りが鼻をついて僕の中に入って来たからだ。 「君、空手やりなよ」 「はい」 色んな感情やらなんやらで、ぐっちゃぐっちゃになっていた僕に、拒否なんて出来る筈なかった。
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