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サマーバケーションで八月の末に日本から異国の地へ降り立った十歳の少年、鳥海叶途――カナトは、海原に浮かぶ変わり映えのしない武骨なタンカーの群れをうんざりしながら見つめていた。
父親に連れて来られたのはシンガポールでも有数のリゾート地でもあるセントーサ島のタンジョン・ビーチ。一年中亜熱帯気候の東南アジアのビーチは24時間365日入場が可能だというが、乾季にあたるいまの時期は日中暑すぎて外にいるだけで灼けるような日差しが顔をだしていたため、太陽がのぼっているあいだは外に出る元気も起こらなかった。夕方にざぁっと降ったスコールの勢いにも驚いたが、これはシンガポールでは当たり前のことらしい。現地法人の若手社員が説明してくれたので、そういうものなのかと納得し、日が落ち着いてからようやく外出する気になったところである。
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