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その人は、見向きもせず、ピアノの前に座っている。
「篠さんですよね。」
尋ねると顔をこちらを向けたが、冷めた目だ。ただ、私が続けた言葉に表情が変化した。
「あなたの知っている笹本 千幸(ササモト チユキ)さんについて教えて下さい。」
目をカッと開いたかと思うと。
「出ていけ。」
そう叫んだ。
「私は、千幸さんについて知りたいんです。」
「出ていけ。」
二度目の出ていけという言葉は、悲しい感情にも見えた。
けれども、負けるわけにはいかない。
「‥どうしても知りたいんです。」
その私の言葉にやっと篠さんが振り向いて驚いた顔をした。きっと私は、悲しい顔をしていたのだろう。彼と同じの。
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