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「いや、別に何も。正月だから、家族は何をしているのかな~と」
佐和田少佐は、計器に目を戻した。シャルル少佐は、異状がないことに少し安心しながら言った。
「家族ですか……。やっぱ、寂しいですか?」
「そりゃ、当たり前だろ。全然帰れてないからな。20年この仕事を続けてても、なかなか慣れないよ」
佐和田少佐は、苦笑いして言い、そして続けた。
「シャルル少尉も、会える時はなるべく会った方が良いぞ。時間は無慈悲に過ぎ去っていくからな」
「そうですか」
シャルル少尉は、観測機器に目を落とした。
シャルルは、観測機器を見つめながら、飲料容器に手を伸ばした。中に入っているのはただの水だった。ストローに口をつけて、粘性の強い水を飲み込む。
お昼時に近づいていた。シャルル少尉は、水を飲み込むと、胃の中が空っぽであることに気がついた。
「佐和田少佐、午前観測勤務時間はあと何分ですか」
佐和田少佐は、手元のデジタル時計を見ながら答える。
「あと30分。これが終われば、昼飯だな」
「ほんと。早く、温かい昼飯が食べたいものです」
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