寝ても醒めても

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 シルバのDJプレイによって、フロアは凄い盛り上がりを見せていた。毎週来ている常連客も「今日のシルバはどうしたんだ?」と口々に漏らしていたが、結局は楽しければ理由なんかどうでもよさそうだ。  二十三時を回った辺りで終電が気になりだし、シルバに「そろそろ帰るね」と告げると、彼は店の外まで一緒に付いてきてくれた。店を出ると夜空には、満月より少し欠けた十六夜(いざよい)が煌々と輝いている。 「DJシルバ、凄く格好良かった」  ターンテーブル間近でDJプレイを見学し、フロアで盛り上がるお客さん達の熱気を見て、素直にそう思う。 「そ、そう?」 「マスターに話しとく」 「やめろよ」  同時に笑う。マスターもこの姿を見たら驚くだろうが、同じような時間帯に営業をしているので、見れる機会が無いのが残念だ。シルバはどうやら、マスターに見られたくないようだが。 「次の金曜日もまたCoffinに?」 「うん」 「俺の店にはもう来てくれないの?」 「う~ん……気が向いたら?」 「やっぱこういうの、うるさいか」 「そうじゃないよ。そうじゃないけど、DJシルバが……」 「俺が?」  「あまりにも眩しくて」と言いかけようとして、「なんでもない」と誤魔化した。 「なんだよそりゃ」 「またね」 「あ? あぁ」  手を振りつつ、帰り道を一歩踏み出す。すると後ろから「要ちゃん、ちょっと待って」と声をかけられた。振り返ろうとしたら腕を引かれて、その勢いで頬にチュッとキスされる。 「え?」 「またCoffinに行くから。そしたらまた、一緒に飲も?」  耳元でそう囁かれて、私の目を見ずに彼は店の中へと戻ってしまった。私はゆっくりとその箇所に手を伸ばし、そこから暫く一歩も動けなくなるのだった。 <寝ても醒めても 完>
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