二つの顔を持つ四人の男

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「ふぅ。今日の放送もまあまあの大盛況だったべ」 ・メリノの中の人(33)  小学校時のあだ名:ゴリ、類人猿、もじゃ公 「んで、今日の投げ銭はどんなもんだすか?」 ・ミヨウの中の人(34)  小学校の時あだ名:ガマガエル、アブラギト夫、イボキング 「二十七万飛んで五百円。んー、今日はやや少なめずらな」 ・ジンギスの中の人(32)  小学校時のあだ名:ゾンビ、しかばね、ガリガリくん 「ま、平日なんてこんなもんじゃよ」 ・ウルの中の人(31)  小学校時のあだ名:おっさん、社長、フケガオ太郎  四分割された画面に、あだ名通りの人物が表示されると、一同は下卑た笑い顔を浮かべた。  彼らもかつてはミュージシャンや俳優を目指し上京してきた夢見る若者だった。だが生まれ持つその顔が原因で夢は叶うことはなかった。  それならばと顔出しの必要がなく元々声には自信があったので、声優のオーデションに挑戦。しかし書類審査でことごとく落とされた。それでも諦めきれず加工した写真で応募し、どうにか面接までこぎつけた。  その面接で言われた言葉が四人をどん底へと突き落とすこととなった。 『あのね、今の時代声優もある程度のルックスを求められてるわけ。ただ声がいいわけじゃおはなしにならないの。ていうか、あんたらみたいなキワモノのがイケボ出してたらもはやギャグよギャグ』  意気消沈で会場を後にした四人は同じ境遇ということですぐに意気投合。今までバカにしてきた奴らを見返してやろうと3Dモデルやモーションキャプチャーなどを独学で猛勉強し、ブイツーバーとして活動を始めた。  すると人気はうなぎ登り。今では普通に動画配信だけで食べていけるようになった。  ブイツーバーを始めて一年も経過すると、活動は動画配信だけに留まらず、テレビでも取り上げられ歌手としてもデビュー。果てには比較的大きな会場を貸しきりライブイベントも企画された。  ようやく世間に受け入れられ、認められたと喜ぶ四人。だが、心の奥底では別の感情が眠っていた。
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