夢に向かって駆ける

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 もう書けない。  彼の世界は暗闇に堕ちていった。  何年も本から離れた。  周囲から呆れられるほど好きの対象物だったが、不思議と彼には後悔など無かった。  そうして数年が経ち。  ある日、急に光が差した。    強烈な物語のビジョン。文章。過去に小説を投稿していたサービス。  何故か、それが一気に押し寄せてきたのだ。  頭の中が流されそうになるほどのそれほ、考えないようにしようとしても、濁流のように押し寄せ、押し止めようもしても威力を増すばかりで、抑えきれるものでは無かった。  今にも決壊しそうなダム。堅実な現実。それを破壊したい無謀な夢。  思えば、彼はもう壊れる寸前だったのかもしれない。  本から離れた数年は空虚だった。  底が抜けた空っぽの心に、無理矢理充実感を押し付け、埋めようとしていた。    だが、その度に呆気なく抜け落ちた。心が本当に必要なものから避けていたのだ。当然とも言えるが、彼はそうするしかなかった。  次第に、彼の心も限界に達していたのかもしれない。  自ら命を絶つことも何度も考えた。  それを止めるために、脳が無意識に指示を出し、本当に必要なものを思い出させようとしたのかもしれない。
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